4th.Saudade
「じゃぁ葵は、瑞希を恋愛対象としてすきじゃないわけ?」
今を逃したら、きっともうこんな話はしないだろう。
聞けるうちに聞いておこう。
葵は少し黙っていた。
その物憂げな表情が、あたしの胸を締め付けた。
何であの時、サボったりしたんだろう。
サボったりしなければ、葵をすきにならなかったんじゃないかな。
人見知りのあたしに対しても気さくに話しかけてくれて、いつも頼りになる葵。
自由気ままで人に弱みを見せない強さがすき。
でも……。
葵は瑞希の彼氏なんだから。
「あのね、梨乃。
幼なじみっていうのは、境界線を引くのが難しいんだ」
意味がわからなくて、首をかしげた。
「相手の気持ちに何年も前から気付いてたんだよ?」
ああそうか。
葵は、優しいから。