4th.Saudade
「あー、梨乃、気付いてないの?」
「だからさぁ。みんなして何なの?」
ついつい棘のある言い方をしてしまった。
でもみんな、言ってる意味がよくわかんないんだもん。
「いや、うん」
葵は苦笑いしている。
あたしはたぶん、眉間にしわがよっているだろう。
「っていうか、祐のすきなひとなんてどうでもいいし」
実際結構こだわってる。
でも結局みんな教えてくれない。だからもう、どうでもよくなってきた。
……祐のすきなひとなんて。
「もしかして梨乃かもよー?」
おどけた調子で言う。
そんなわけないじゃん。あたしと祐は、友達なんだから。
っていうか、あたしみたいな素直じゃなくて可愛くない女、誰も彼女にしたいなんて思わないでしょ。
「まさか。ないない」
「もしかしたら、もしかするんじゃん?」
「だから、ありえないってば」
そうだよ。
祐があたしをすきなんて、ありえないでしょ。