4th.Saudade
「梨乃さー、髪染めたりしないの?」
「だるい」
「はは。そんな感じだよね」
その後チャイムがなるまで、取り留めのない話をしていた。
あたしは無口な方だし、葵もあんまり自分の話をしない。
葵が質問して、あたしが答えるって形が多い。
だから沈黙も多いけど、不思議と嫌じゃない。
話してない時も、葵には確かな存在感がある。
だからかな。
葵といると、自分は一人じゃないんだって思えるんだ。
「あーなんか曇ってね? 雨降るのかな」
「梅雨入るしね」
「かったるー。俺傘持ってねぇし」
葵とあたしの会話は適当で、あまり盛り上がるってことがない。
でも気を遣わなくて楽。
男子でこんなに話しやすいの、葵くらい。
あ、祐とは腐れ縁だから特別だけど。