4th.Saudade

「梨乃さー、髪染めたりしないの?」

「だるい」

「はは。そんな感じだよね」

その後チャイムがなるまで、取り留めのない話をしていた。
あたしは無口な方だし、葵もあんまり自分の話をしない。
葵が質問して、あたしが答えるって形が多い。

だから沈黙も多いけど、不思議と嫌じゃない。

話してない時も、葵には確かな存在感がある。

だからかな。
葵といると、自分は一人じゃないんだって思えるんだ。


「あーなんか曇ってね? 雨降るのかな」

「梅雨入るしね」

「かったるー。俺傘持ってねぇし」

葵とあたしの会話は適当で、あまり盛り上がるってことがない。
でも気を遣わなくて楽。

男子でこんなに話しやすいの、葵くらい。
あ、祐とは腐れ縁だから特別だけど。

< 39 / 52 >

この作品をシェア

pagetop