4th.Saudade

瑞希と葵は違う方向だから、例によって祐と二人で帰る。

二人の最寄り駅について電車を降りると、祐が少し言いずらそうに口を開いた。

「あのさ、行きたいところあるんだけど」

普段ならどこか聞いて、気分で行くか行かないか決めてたけど、今日の祐はそれをさせない雰囲気だった。

「……いいよ」

そう言って、祐について行くことにした。
いつもおしゃべりなのに、口数が少ない祐にある不安を覚える。

何か今日の祐、変だよ。

何処に行くのかな。

そう思っていると、ある場所で祐が立ち止まった。
そこが意味することを、あたしも祐も理解していた。

「……なんで?」

そうとしか言えなかった。


祐が行きたいところは、ここ、桜公園。

中学の時、家を飛び出して泣いていたあたしを、見つけてくれたところ。
祐と仲良くなるきっかけをくれた場所。
心を開くことが出来た場所。

……あたしと祐が、本当の意味で出逢った場所。

< 51 / 52 >

この作品をシェア

pagetop