4th.Saudade
瑞希と葵は違う方向だから、例によって祐と二人で帰る。
二人の最寄り駅について電車を降りると、祐が少し言いずらそうに口を開いた。
「あのさ、行きたいところあるんだけど」
普段ならどこか聞いて、気分で行くか行かないか決めてたけど、今日の祐はそれをさせない雰囲気だった。
「……いいよ」
そう言って、祐について行くことにした。
いつもおしゃべりなのに、口数が少ない祐にある不安を覚える。
何か今日の祐、変だよ。
何処に行くのかな。
そう思っていると、ある場所で祐が立ち止まった。
そこが意味することを、あたしも祐も理解していた。
「……なんで?」
そうとしか言えなかった。
祐が行きたいところは、ここ、桜公園。
中学の時、家を飛び出して泣いていたあたしを、見つけてくれたところ。
祐と仲良くなるきっかけをくれた場所。
心を開くことが出来た場所。
……あたしと祐が、本当の意味で出逢った場所。