4th.Saudade
「梨乃は、ここだよね?」
そう言って示したのは、時計台の下のベンチ。
ああ、そうだ。
あたしはここで泣いていたんだ。
「祐は、買い物帰りだったんだよね」
あたしはそのベンチに座り、祐も座る。
ほとんど人が来ない場所。
ブランコと小さな滑り台しかない、小ぢんまりした公園。
「同じクラスなのに、話したことなくて、仲良くしたいと思ってたんだ。
そしたら、人気のない公園で泣いててさ」
「……うん」
覚えてる。
ちゃんと、覚えてるよ。
「みんな梨乃を、冷たいとか言ってた。
でもあの時の梨乃は、守ってあげなきゃいけなかった」
あたしは祐に、助けてもらった。
死にたいほど傷ついていた時に、光に導いてくれた。
もう何年も経つんだな……。
でも祐が何を言いたいか、まだわからない。
あたしは逆らわずに、座って話しを聞こうと思った。