4th.Saudade
「たーすくっ! おはよぉー」
瑞希がまた駆け寄ってくる。
隣にいる矢野祐が、にこにこと返事をしている。
中学の時から仲がいい祐は、あたしを介して瑞希とも仲がいい。
……二人ともテンション高くてうるさいけど。
「瑞希、聞いてよ! 俺今日登校するとき、男子が『1組の二人組の派閥』の話してたの!」
本当にバカだな。言ってる意味わかんないから。
「?」
「梨乃派か、瑞希派かって話!!」
「えー、何ソレー!!」
瑞希はちょっとうれしそうに話に食いついた。
何がうれしいんだかあたしにはわからない。
「可愛くて守ってあげたい村田さん。
凛として、でも儚げなクールビューティ佐川さん。
どっちもいいよねー! って話してた」
「えー? 瑞希モテモテじゃーん! 困っちゃうなぁ」
瑞希は満面の笑み。
知らない男に値踏みされてるなんて、不愉快以外の何物でもない。
「でも村田さんは彼氏いるからなぁーとも言ってたけどね」
祐がいたずらっぽく笑う。
「まぁ、瑞希は葵一筋だもんっ」