4th.Saudade
「おいしーい!!」
瑞希と祐は、クレープのおいしさに感動したらしい。
いや、あたしもそれなりに感動してるけど。
葵は甘いものが苦手だから、飲み物を飲んでいる。
瑞希と祐は、きゃーきゃー言っている。
葵はそれに茶々を入れる。
あたしはそれを聞いている。
それがこの4人のパターン。
葵を見ると、胸がぎゅうっとした。
今は明るめの茶髪に、ピアス。
背が高くて、遠目で見ると、モデルみたいなんだよなぁ。
可愛いくて素直な瑞希と、お似合い。
男嫌いなあたしが、まさか恋するなんてね。
誰にも言えない恋だけど。
決して叶わない恋だけど。
「ったく、祐と瑞希が騒いでるから、日が暮れちまったじゃねーか」
確かに、もうとっぷり日が暮れている。
何だかんだでこの4人でいると楽しい。
瑞希と葵が笑いあうたびに、少し、胸が痛むけど。
「だっておいしかったもん! ね、祐?」
「うん! これははまるわー」
駅からは、お互い別方向。瑞希と葵、あたしと祐に別れる。
二人は幼なじみで家が隣だし、あたしと祐は中学が同じだから、家が近い。
「ばいばーい」
駅で別れて、祐と二人きりになる。