ジルとの対話

創造された影

キースは10歳の始め頃に、ジルの屋敷と似通っている家にすむ夫婦に引き取られた。
キースは本当の父と母のように思いながら接していたけれど、何処かあまりに期待されていた気がしてならなかった。
しかし、それも慣れてきた。
甘い言葉、何より自分自身はここにいるとわかってくれる人がいることが、干渉されるのがたまらなく嬉しかった。
ただ、やはり愛に見返りを求められた。
期待は失望憎しみ変わる。お前を引き取ってやったのにと、なじられた。
自分がロックギタリストになりたい。と言ったころからだ。
悪魔の音楽だなんて馬鹿げている。新しい音楽、大きな音。不安な心を吹き飛ばし、自分は誰よりも強いんだと、暴力ではなく音楽で言える。ただ1人で生きるにはそれなしにはあまりに不安な世の中だった。かつての宗教の神はもはやファンタジーの位置にあぐらをかいている。
キースの救いの神はロックの中にいた。
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