ジルとの対話
感じる事が出来るんだ。これほど人は楽に生きる事が出来るんだと感動した。」
キースが話を結んだ。
「宇宙との対話なら、平原にも見られるよ。風が吹くと話し声みたいで、自分たち以外にも意識を持って囁いている者たちがいるんだと、僕は寂しさを忘れる。」
ジルが語った。
「ひそひそと、泉の可愛らしい声が、大好きだ。」
フランツが感極まって言った。
「地球は一個の楽器のように、ハーモニーを奏でているのを感じるね。とっても小さな音もあって、芸術はそれらを模倣する術であるように思う。」
キースが言った。
「デビッドは、構わないのかい、泉に行っても。」
フランツが頃合いを図ってデビッドに尋ねた。
「お家に帰る時間なの?」
ステラが気に病んで、尋ねた。
「まぁどうだろ、デージーが何かうるさく言うかもしれないが、うさぎでも帰りに持って行ってやれば、喜ぶだろ。」
デビッドの言ううさぎは比喩である。
心優しい、読者諸君に配慮した言葉だが、どうぞあまり残酷な想像はしないでもらいたい。諸君の想像したそれと同じだから。
「塔に入ると、寒くてね、うさぎはあったまるんだ。」
デビッドが続ける。
「不思議に思うよ、世界の生命は、弱肉強食と言われるが、それを感じることが鈍くなった気がする。聖書の影響もあるだろう。悔い改めよと説教したおかげで、命も永遠に近づいた。きっと神が地球を赦され、罪は無くなったのかのようだね。心持ちは、楽園そのものだ。住みにくい世の中さ。」
悪魔のデビッドはぼやく。
「私、ボート遊びがしたいの。一緒に乗ってくださる?」
ステラがデビッドに尋ねた。
「構わないよ、ステラ。俺で良いなら。」
「僕もいいかい?」
フランツが尋ねた。
「ええ、2人乗りだから、沈むでしょうけど。」
ステラが意地悪そうに笑って言った。
「それなら、もう一艘船を出して、みんなで乗らないか?」
フランツは言った。
「フランツ、俺の話を聞いてくれないか?ボート遊びなんか2人でさせてさ。」
キースが見かねて言った。
ギターを弾きながら、キースはフランツに構ってあげた。
オーベロンの宵に季節は冬へと移ろい行く。
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