魅惑のくちびる
ほてった顔の温度を下げるのに、夜風はちょうど良い扇風機だ。
酔いを冷ますため、歩きながら考えるのは……どうしても雅城のことばかり。
今日は、由真に質問を投げかけられたお陰で、雅城のいいところをたくさん再認識することができた。
やっぱり、わたしは雅城のこと、大好きだ。
どんなに気分がよくない仕打ちを受けたとしても、悔しいけど好きなんだ。
わたしにしか知らない雅城の顔をたくさん知っている。
そりゃ確かに雅城の態度は大人げないけど……それを許せないわたしもまた、大人げない――。
帰ったら、やっぱりわたしからごめんねって言おう。
何事もなかったように、雅城にすり寄って、いつもみたいにキスをしよう。
大事な場面で、このくちびるが役に立つかもしれないな。
それならば、それには心から感謝しよう……。