魅惑のくちびる
13:ほどけたビーズ

それ以上、何も言えなかった。

何を言ったところで、雅城を逆上させるだけだってわかってるから。

どんなことを言えば納得するのか、そんなの答えが存在しないって……わかってるから。


雅城は興奮して息が荒くなり、肩が大きく上下している。

目はわたしをまっすぐ見るというより、明らかに睨んでいた。


「ふざけんなよ……。

オレを一緒にランチに誘った日、どうもおかしいと思ったんだ。

なんでオレを誘った? 飲みに誘ったのもわざと見せつけるためか?」


違う……。

心の中で叫んだけど、実際声に出すのが恐くてためらう。


「璃音は、そんなことする奴じゃないって思ってたのに。

松原との話を教えてくれた人の話からじゃ、もう結構前から親密なんだってな。」

わたしは、静かに首を横に振った。

でも……やっぱり声を出すことはできなくて目をつぶった。

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