魅惑のくちびる

雅城をかばえる余裕はとっくに残っていなかったのに、それでもつま先でなんとか頑張って立っていた。

でも……もう、それも限界。


わたしは、流れる涙もそのままに、目をそらしたまま言い放った。


「寝たわよ。

……こうやってわたしの口からそれを聞けて、満足した?」


ついたままのテレビからは、楽しそうに笑う声が響いている。

まるで、今のわたしを笑っているかのように「アホちゃうか」と言いながら――。

でも、違うと強気で否定すればするだけ、余計に攻撃したくなるはず。

今更何を言っても無駄なだけならば、雅城が思うように答えてあげればそれでいいんだ。



帰ってくるまでは、仲直りするつもりだった。

テグスに優しく一つひとつ、ビーズを通しているかのように、丁寧に気持ちを重ねて。


でもそう言えば、わたしは昔から、手先は不器用だった。

手元を誤って、完成間近のビーズのネックレスの、連なったビーズをバラバラにしていた。

たった少し、手を離しただけで全部のビーズは見事に床に転がり散って……

ネックレスが完成しそうだったことも忘れるほど、1つの小さな個体に戻ってしまう。


散らばった煌めくビーズは、いつまでもわたしをくよくよさせていた。

もう少しで、かわいいネックレスが出来たのにって――。

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