魅惑のくちびる
「璃音ちゃん? どうしたの、こんな時間に。
嬉しいけど、ちょっと驚いたよ。」
安心を確信できる場所。それが存在しているってなんて嬉しいことなんだろう。
癒されたいと思ってかけた電話を相手が、やっぱり今日も癒しの存在であることを確認し、ただただ、心が安らぐ。
松原さんの優しい声が心に静かに染み入り、涙が溢れて止まらなくなった。
「突然ごめんなさい。松原さんの声が聞きたくて……。」
「オレはいつだって璃音ちゃんの声を聞きたいから、どんな時間でも大歓迎。
でも璃音ちゃん……なんだか、泣いているみたいだけど、大丈夫?」
大丈夫、と聞かれると、余計に涙が出るのが子供みたいで恥ずかしい。
でもやっぱり涙は止まらなくて、手で拭いながら、その場にへなへなとしゃがみ込んだ。
「松原さんに……会いたい……。」