魅惑のくちびる
わたしの彼氏の存在を知る人は数少なくて。
そんな彼氏と、うまく行かないことを知っていて……わたしのことを想ってくれている、松原さん。
こういう時だけ寄りかかるのはずるいんだってわかってる。
でも……どうしていいのかわからない。これ以外の方法を今のわたしに見つけ出すことはできなかった。
「璃音ちゃん。今どこ? オレすぐに車を出すから待ってて。
夜道は危険だから絶対に一人で歩いたらダメだ。
すぐに明るい場所……そうだ、コンビニみたいな他の人がいるところがいい。
そこで待っててよ。わかった?」
何も言わなくても背景を察してくれる、それだけで随分と気が楽で。
そして、わたしのことを理解してくれているんだという実感が、さらに安心感を生み出すのがわかる。