魅惑のくちびる
「うん。元気よ。新しい部署でもバリバリ仕事してる。」
「そう。それなら良かったわ。
まぁ……喧嘩も、しているうちが花だからね。
何も言わなくなっちゃったらおしまいよ。」
――そんな風に言われたら、今、すでにそんな状態になってるなんて、ますます言えなくなってしまうよ。
「わかってる。ちょっとお互い大人げないだけよ。」
お母さんに心配をかけないように、短く言葉を切った。
「いつもならすぐに仲直りするんだけど、今回はちょっと時間かかりそうなの。」
本当は、もう仲直りできる自信なんて残っていない。
だって……
雅城にとってわたしは、浮気者でしかなくなってしまったのだから。