魅惑のくちびる

雅城とつきあい始めるか始めないかの……食事に一緒に行き始めた頃。

この部屋で、一日の出来事を思い出しては一喜一憂していたっけ。

ベッドに横になり天井を見上げていたら、そんなことを思い出していた。


雅城のことが日に日に好きになっていたあの頃のわたしは、雅城の言うこと、すること、すべてが興味で、ときめきだった。

仕事でわからないことも雅城に聞けば解決するし、全力で助けてくれる姿がとても頼もしく感じて……雅城への思いが恋心に変わっても、上司としてはいつも尊敬していた。


「大塚さんならできるよ。

失敗しても、次に生かせばそれは決して無駄なことじゃないんだから。」


前向きに励ましてくれる雅城に、何度助けられたことか――。


彼氏に変わってからも、雅城のまっすぐなところに幾度となく救われた。

苦笑いしちゃうほどの心配性がおまけに付いてきたけれど、それでも幸せだと思って毎日を過ごしていたんだ。

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