魅惑のくちびる
そのまま眠りについていたのか、ふと気が付けば外はもうすでに真っ暗になっていた。
携帯のサブディスプレイの着信を知らせるランプが目に入る。
何を期待しているのか、急に気持ちが高ぶって来た。
高鳴る胸を押さえつつ携帯を開くと、不在着信で入っていたのは雅城ではなく、由真からだった……。
「どうしたのー?今日休んだんだって?
滅多に休まないのに珍しいよね。
具合でも悪いわけ?」
由真の声の後ろは、がやがやと騒がしい。
大学の時の友達と飲んでいるのだと言っていたけれど、たぶんいつもの居酒屋だろう。
「ううん。大丈夫。わざわざありがとうね。」
由真には隠さずに話そうとは思うけれど、少し頭の整理が必要だ。
出先ではなく、落ち着いて話を聞いて貰いたいと思う気持ちもあったわたしは、適当な話題で電話を終わらせると、大きく頭を抱えた。
――こんな状況、一体どうやって説明すればいいんだろう……。