魅惑のくちびる
16:縮んだ距離
「ねぇ……別に意見する気はないけどさ。
璃音は本当にそれでいいわけ?」
次の日、早速由真にランチを誘われたわたしは、ごく簡単に今の状況を説明した。
由真が急に声を荒げたせいで、隣に座っている近所の行員のお姉さんがこちらをちらちら見ているのが気になる。
「もう……由真ったら声大きい!」
周りの人と目が合わないように、できるだけ小さく背中を丸めた。
「だって、信じられないよ。
あんなに『雅城、雅城』の璃音が、松原さんと本当にそんな関係だったなんて、なんだかだまされてるみたいで。」
「そんな関係だなんて言い方しないでよ。まぁそりゃぁ確かに……そうだけど。」
「――まさか、成り行きだなんて言わないよね?
璃音はそんなのでそういうことをするような子じゃないでしょ?
気持ちが付いてなければベッドにも応じてないと思うけど。」