魅惑のくちびる

「恥ずかしいよ……誰かが来たらどうするの? お願い、おろして?」


「誰もこないよ、こんな時期だもん。

今だけは、オレと璃音だけのプライベートビーチだよ。

……よし、もう少し走るか!」


よいしょ、ともう一度抱え直すと、更に水をめがけて行った。

わたしは再び、大きな声を上げて抵抗するも、声を上げれば上げるほど、瞬はそれに合わせて走るスピードを上げて行く気がした。


もうすぐ、膝までの深さに到達するかというその時――


「きゃ――――!」


水に足をとられた瞬は、バランスを崩して、見事な尻餅をついた。

……当然わたしをも巻き添えにした、少し早すぎる海水浴をする羽目になった。

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