魅惑のくちびる
脱衣所から戻ったわたしを、すかさず瞬は後ろからぎゅっと抱きしめる。
「今日は……そんなつもりじゃなかったのに。
璃音にそんな格好で歩かれたら、襲わない男の方が不思議だよ……」
数時間前、失敗したばかりのお姫様抱っこを、今度は自信ありげな顔で楽々としてみせると、そのままベッドへと運ばれて行った。
瞬は、ベッドの始まりも終わりも、キスを欠かさない。
どちらともそれはふわりとした優しい感触で、特に終わりのキスは顔のあらゆるパーツに一つずつそっと温度を置いてゆく。
まぶたのキスはくすぐったくて、思わずくちびるをかみしめてしまう。
でも、とても大好きなキスだ。
「オレは本当に幸せものだ。
こんなにもかわいい、いろんな顔の璃音を独り占めするなんて。」
以前もそうしたように、わたしのくちびるをツゥーと人差し指で撫でるのを、瞬は気に入っているみたいだ。
くちびるの上を何往復かした後、トントン、と小さく合図すると、わたしがぱくっと含むのがお決まりになっている。