魅惑のくちびる

「でも、今は本当にここで仕事してて良かったって思えるよ。

――なんてったって、こんな素敵な天使に出逢えたんだからね。」


くすぐったい言葉を、あえて向けてくれているってわかっている。

ラベンダーの香りに包まれながら過ごす、甘いひとときは……優しさでとろけてしまいそうだ。




「そういえばさ、璃音の同期って誰だっけ」


瞬の言葉は、わたしを一気に現実へと引き戻した。

……質問は、わたしの同期が誰なのかって事なんだ。

でも、その先に続く言葉を脳裏に浮かべた瞬間、甘さが苦さで上塗りされてしまったかのように思えた。


黙っているほど、どんどん気まずくなるのが嫌で、ひとまず由真の名前を口にした。

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