魅惑のくちびる
19:思い出とコンプレックス
「由真って……木原とか言う子?
なんだか凄く元気のいい子だよね。
あまり他部署の人は知らないオレだけど、何故か彼女の名前は知っているよ。」
瞬は、白い無地のTシャツに袖を通すと、タバコをくわえて青い100円ライターを手にした。
由真は仕事もできるうえに、とにかく目立つし人当たりがいいから、会社でも色々な部署に知り合いがいるんだ。
もしかしたら瞬も、誰かから噂を耳にしていたのかもしれない。
「同期ってさ、一緒に頑張ってきた仲間っていう安心感も大きいけど、負けられないっていうライバル意識もあるよな」
瞬のその言葉に、わたしの頭に浮かんだのは……雅城の顔だった。