魅惑のくちびる

「オレは、最初から田上のことが好きだった。

友達というより、こいつをオレの彼女にしたいって思ったのは割と早い段階でのことだったんだ。

でも、臆病なオレは、自分の恋心が気付かれて、この楽しい時間がなくなってしまうのが怖くてさ。

しばらくは友達のまま仲良くしていこうって思ってたよ。

……ほら、オレ、何度も言ってる通り、恋が叶ったことがない連敗中の男だからさ。

どうやってもオレのこの身体からは、ひとかけらの自信も出てこなかったんだよ。」


雅城から田上さんの話を聞かされた時は、名前を聞いたことがあると思った程度で、それ以上は田上さんのことを想像しないままだった。

でも、雅城だけじゃなく瞬までもが好きになってしまった女性。

本当に、顔も見たことがなかったかな……

もう一度、脳内の記憶を絞り出して思い浮かべて見たけど、やっぱり田上さんを映像にすることはできなかった。

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