魅惑のくちびる
「あ……ごめんな、他の女の話なんか。
気分良くないよね。
――でもさ、田上への想いが叶ってれば、今こうして璃音はここにいないわけで。
オレの弱いところも、璃音にはさらけ出しておこうって思った……男の小さな決意だと思って、もう少し聞いてくれるとありがたいな」
「ううん……大丈夫。」
また一つ、嘘をついた。
わたしはこの結末がどうなったのかを知っているのに、知らないフリをして瞬の話に耳を傾けている。
だけど――本当のことは言えないから、こうするしかないんだ。
ごめんね、瞬……
つくづく自分が嫌になり、膝に顔を埋めた。