魅惑のくちびる

「あ……ごめんな、他の女の話なんか。

気分良くないよね。

――でもさ、田上への想いが叶ってれば、今こうして璃音はここにいないわけで。

オレの弱いところも、璃音にはさらけ出しておこうって思った……男の小さな決意だと思って、もう少し聞いてくれるとありがたいな」


「ううん……大丈夫。」


また一つ、嘘をついた。

わたしはこの結末がどうなったのかを知っているのに、知らないフリをして瞬の話に耳を傾けている。

だけど――本当のことは言えないから、こうするしかないんだ。


ごめんね、瞬……


つくづく自分が嫌になり、膝に顔を埋めた。

< 178 / 240 >

この作品をシェア

pagetop