魅惑のくちびる

「乾燥機、終わったみたい。

洋服取ってくるね」


ここに、こんな格好でいる自分が、急に悪者のように思えてきたわたしは、話を遮って立ち上がった。


雅城がただならぬ意地っ張りだって、誰よりも知っているのはわたしだったはず。

わたしを責めるのも、勝手な心配も、それはすべて雅城ルールなのかもしれないけれど……


そんなの、百も承知だったはずじゃない。


なんだか、強く頬をぶたれて目が覚めたような感覚を浴びながら、乾燥機から出たばかりのグレーのパーカーを身にまとった。

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