魅惑のくちびる
21:不器用で意地っ張りで
「帰るの?
せっかく洋服も洗濯したんだから泊まればいいのに。」
先ほどまでのだらしない格好から、朝来た時の洋服に着替えた姿を見た瞬は、部屋の電気をつけながら少し驚いた顔をした。
「うん……ごめん。
夜指定で荷物が来るのすっかり忘れてた」
そんなもの、待ってても来るわけないけど。
わたしは、自分がしている行為で、瞬をまたも傷つけてしまうことを思うと、どうしても正直に伝えることができなかった。
瞬の一番のライバルである雅城と実はつき合っていて……
うまく行かなくなって、瞬へ逃げていたわたしは今また、雅城の元へと帰ろうとしている――。
わたしは、自分の弱さで人を犠牲にした。
決してもてあそんだわけじゃない。
ただただ、弱さに負けてしまっただけ……