魅惑のくちびる

「そんなんだから、仕事でもプライベートでも北野に勝てないんだろうな。

オレはどこまで行っても勝てないかもしれないってわかってるんだ。

だからプライドを捨てて、ライバル心も少しずつ収めたつもりだったけど、なかなかそうも行かないんだな」


普段クールな瞬が、こんなことを思っているなんて、誰もが思っていないはずだ。

自分の気持ちを押し込めてふるまっているとは思えないほどに、ノビノビとおおらかに見えるからこそ、会社ではみんなから尊敬のまなざしで見られているんだから。


「……前にさ、北野をランチに誘っただろう?

あの時、オレの中には、北野への対抗心があった。

お前は相変わらず田上とうまくやってるだろうが、オレにはこんなにかわいい好きな人が出来たんだぞって。

それがまぁ……あんなことになっちゃって。

なんだか璃音には悪いことをしちゃったんだけどさ」


「ううん……いいの。」

……いいも悪いも、わたしがしていることはもっと酷いんだもの。

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