魅惑のくちびる
いつも送ってくれる、コンビニの駐車場に車を止めると、瞬は少し寂しげな笑顔を浮かべた。
「そういえば、璃音の家に行ったことないよな。」
「あ……うん……そうだね、ごめん。」
下手な言い訳でもう、傷つけたくない。
それ以上、何も言わなかった。
「いいんだ。オレも、自分の家の方が好き勝手できるしさ。
今の忘れて、ごめん。」
――瞬は、いい意味で優しすぎるよ。
わたしは小さく手を振って、車を後にした。
ここで下ろされても、実家への道のりはほど遠い。
どうやって、帰ろうかなぁ。
駅まで出るのも面倒だし、バスもここからだと乗り継ぐ必要がある。
タクシーでも拾おうかと考えながら、とぼとぼと夜道を歩いていた。