魅惑のくちびる
22:理解者
「このテレビを買う時にさ。
オレがどうしても欲しいって駄々をこねる子供みたいに大騒ぎをしている横で、璃音は笑ってるだけだったよな。」
雅城は、毎日のお楽しみアイテムの37型テレビを指さした。
その日はとても寒い日で、電気店に着く頃には雨が雪に変わりだしていた。
凍える中、お店に入るとすぐにテレビのコーナーへと向かい、店員さんと小一時間話をした結果、メーカーで最新型のこのテレビに決めたのだった。
ボーナス前からだいたい目星はつけていて、これだと決めていたのに、いざ買うとなるとあれもこれも気になりだして、店員さんとテレビ談義に花を咲かせて。
わたしは、二人の濃い会話はよくわからないから、黙って聞いているだけしかできなかったんだ。
「ずっとほったらかしで待たされてるのに嫌な顔一つせず、オレが出す結論を黙って待ってくれて。
テレビの時だけじゃない、いつもどんな時にも、そうしてくれてるんだよな。
オレの欲しいもの、したいこと、望むこと、すべてわかってくれる、理解者なんだ」