魅惑のくちびる
でも……それじゃ何も変わらない。
今わたしたちに必要なのは、よりお互いを理解して確認し、それをお互い認められるかということ。
ガラステーブルの上に置いたままになっている、ビールの空き缶を集めながら、わたしは雅城へと問いかけた。
「ねぇ……。
雅城はなんであの時、松原さんにわたしとのことを教えなかったの?」
「えっ?」
「……ランチに行った時よ。
わたし、雅城の言うとおり、会社の人の前ではわたしたちのことを公表したことはなかった。
ランチに誘われた時も、一緒に来る人が雅城だとは知らなかったし、もしわかっていても、勝手にわたしの判断で雅城との関係を松原さんに告げることはしなかったわ。
あの状況でどうにか流れを変えるとしたら、雅城の口から、松原さんに本当のことを言ってくれるしか方法がなかったのよ」