魅惑のくちびる
外に出ると、日傘を手放せないほどに、日差しは一層パワーを増していた。
今日はまるで紫外線が目に見えるんじゃないかというほど力強くて、屋根からまぶしい光が反射して思わず目を押さえた。
道行く子供も、ちらほら麦わらをかぶっている子がいて、一日一日夏が近づいていることを教えてくれる。
今朝、短く『会える?』とだけメールをしたわたしに、いつもと違う雰囲気を察知したのか、迎えに来た時の瞬の笑顔も、心なしか遠慮がちに見えた。
その様子に少し、心が痛む。
今回の件で一番傷ついた被害者は、間違いなく瞬だ。
加害者はわたしであり、雅城で――。
引きずれば引きずるほどに傷口が広がる気がしたわたしは、車に乗るとすぐに本題を切り出していた。