魅惑のくちびる

「しかし、田上とは終わってたなんてなぁ。

それじゃ、北野もオレにはホントのことは言えないはずだよ。」


思い出し笑いをしながら瞬は缶コーヒーのプルタブを開けた。


「あの時の北野の顔。璃音に見せてやりたかったよ。

ほんっとに真剣にさ、田上を幸せにするって豪語してたんだもんな。

別れただなんて確かに言いづらいってのもわかる気がする」

「わたし、瞬から聞くまで、田上さんじゃなくて雅城の方から好きになったんだと思ってたの。

振られた時の落ち込み様ったらものすごかったからさ」

「それがオレもびっくりだよ。

振るなんて想像もつかないくらいにね、田上は北野に惚れてたんだから。」


瞬の力説ぶりから、それはよっぽど熱い想いだったんだろうって思った。

一番近くで見ていた瞬は……本当に辛かっただろうな。

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