魅惑のくちびる
「璃音が作ってくれる料理だからな、なんでもおいしいよ。
それに、オレのために作ってくれるっていう、その行動が嬉しいんだ」
あれ以来、雅城は言葉使い一つから少しずつ変わってきた気がする。
わたしは、日々それを感じることが最近の喜びの種だ。
「今日ね、広瀬くんが新しい携帯自慢してたよ。」
会社での出来事をお互いになんでも話すようになった。
以前のわたしは、雅城にこれを言えばへそを曲げるんじゃないかとか、嫉妬するんじゃないかと気にして、言葉にしないまま頭の中にある話題を消去することも多かった。
でも、この頃はなんでも話して、話題を共有する楽しみを持つようにしている。
以前、うちの課にいた雅城だから愛着やなじみのある話題も多いし、何よりわたしが一日どんな行動をしたのかの簡単な報告にもなって、かえっていいことなんじゃないかと思っているんだ。