魅惑のくちびる
「広瀬が? 生意気だ、あいつは一世代前の携帯で十分だよ。」
……とは言え、やっぱり男の子の話題が出てくると途端に少しだけ攻撃的になるけれど。
あれだけの心配性が、いきなり両手を広げて、異性の話題を受け入れるなんて無理なのは、こっちも承知だ。
「ビール、もう1本飲んでいい?」
今日はやけに飲むスピードが速い。
疲れているのか、それともご機嫌なのかわからないけれど、最近は350ml缶1本だけだったのに今日は500ml缶をすでに飲み干している。
「うん。あるけど。何かおつまみもいる?」
「ありがとう、大丈夫。……なんだかやたらとのどが渇いちゃってさ」
わたしが缶を渡すやいなやプルタブを開け、コップに勢いよく開けると喉を鳴らして一気に飲んだ。