魅惑のくちびる
雅城は、一言一言を丁寧に口にした。
話す雅城の表情を見ていたら、以前よりとても優しい目になったことに気付く。
わたしはそれだけですでに、胸がいっぱいになった。
「会社では偉そうにしてるくせに、私生活ではまだまだ子供なオレだけど。
璃音を不安にさせないように、頑張るし努力する。
これだけは誓うよ。」
なんとなく、予想がついたこの先の言葉に、わたしは涙があふれて止まらなくなった。
それは、今まで流した涙とは違う、喜びの涙。
今までが塩辛い涙なら、きっと今流れてるこのしずくは甘いドロップのような味がするだろう。
「……またオレは璃音を泣かしてるのか。ホントに駄目だな、オレってやつは」
雅城はわたしの頭を静かになでて、深いため息をついた。
「ううん……そうじゃないの。
雅城がどんどん変わって行く姿が嬉しくて。
それにね、わたしのココに、気持ちもちゃんと伝わってきてるの。」
右手で目頭を押さえながら、左手は心臓のあたりをトントンと軽く叩いた。