魅惑のくちびる

雅城は、これ以上ない笑顔で、わたしを強く抱きしめた。


「きっと、ばあちゃんになっても璃音は周りの男どもの注目の的だよ。

魅力的な妻に鼻高々でいられるような、隣にいてふさわしいじいちゃんに、オレもなって見せるよ!」


いつだったか、雅城が夢だと言って話してくれたことを思い出した。


『年老いたその頃には、ゆっくりと海が広がるところで二人で暮らそう。

朝日を浴びながら、手をつないで砂浜を散歩するんだ。

毎日二人の思い出を語りながらね。

だから、オレと璃音には、話し尽きないほどのたくさんの思い出が必要なんだ。』


……その頃には、『魅惑のくちびる』って呼ばれたことも、笑って話せる楽しい思い出になってるんだろうな。


楽しい未来にさまざまな思いを馳せながら、わたしは甘い時間にしばし酔いしれていた。

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