魅惑のくちびる
「そんなの飲み会のお遊びじゃん。悪気があってやってるわけでも、下心があるわけでもないよ。」
……我ながらマズイキーワードを出したことに後悔したけど、時既に遅し。
「下心? あるに決まってるだろう! 男なんてみんな下心だらけだ!」
「じゃぁ、雅城も?」
「オレは紳士だッ! 他の奴は全部、下心だらけだ!
もう、璃音のくちびるを見て妄想してる奴だらけだ、販売流通課の男どもはみんな不潔なんだぁぁ!」
……息を切らし、必死の訴え。
あまりに興奮して、かっこいいのが台無しだよ、雅城。
そんな姿がかわいくて、おかしくて、思わずぷっと吹き出した。
「こら、璃音!わかってんのかぁ!」
怒りで真っ赤になってる雅城の、手を静かに取った。
「うん。わかってる。ありがとね。でもそんな心配要らないよ。だって、わたしは雅城しか好きじゃないもん。」