魅惑のくちびる
雅城を安心させるために言った、そのつもりだったのに。

「わかってないなぁ、璃音が好きじゃなくても、周りが狙ってるの!

あー、どうしてオレは商品開発課なんかに異動になっちゃったんだろう……部長を恨むぜ、マジで!!」


天を仰いで、両手で頭を抱え出した。

……ダメだこりゃ。

こうなるともう、黙って行く末を見守るほかないんだ。

――付き合って1年半で得た経験だ。


「いいか、璃音。明日からグロス禁止だ! スカートも禁止、それから……」

「ちょ……ちょっと待ってよ!

グロスはわかるけど、スカートまで禁止されたら、明日から会社に着ていく服困っちゃうよ!」

こうなった雅城を心から安心させるには、一体どうしたらいいんだろう……。




なんとか必死に説得して、スカート禁止令だけは解いてもらったけど、グロスは当分禁止だと言われたままだった。


「だいたいさ……璃音はオレの彼女なんだぞ?

販売流通課の男どもは、オレに宣戦布告しようってのか?」

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