魅惑のくちびる

まるで子供みたいなんだから。

でも、なぜか憎めないんだ。


「みんなは知らないじゃない、わたしたちのこと。仕方ないわよ。」

そんなわたしの言葉なんて耳にも入っていない様子で、行き場のない気持ちを抱えたままの雅城は、まだぶつぶつ何か言っている。


――ちゅ。

口を塞ぐように、静かにわたしはくちびるを重ねた。


「そんなに想ってくれてありがとう。でも、あんまり心配しないでね。」


にっこりと笑ったわたしの目を見て、どうやら少し落ちついたみたいだ。


「……悔しいけど、確かに魅惑のくちびるなんだよ。いつも璃音にはやられっぱなしだ。」


雅城は長くて細い指先で優しくわたしの頬をなでると、2倍も3倍もお返しのキスをしてきた。

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