魅惑のくちびる
「ねぇ。もしかしてさ、オレのこと警戒してるの? 襲われたらどうしようとか、口説かれたら困るとか。」
「違いますよ! そんなんじゃなくて……」
「だったらさ。別な奴も誘うから、それだったら文句ないだろう?」
あたしじゃなく……たぶん、雅城から文句があると思いますよ、松原さん。
心で言いかけたその時。
「北野を誘うよ。あいつなら、璃音ちゃんと仕事組んでたこともあるし、顔見知りだから問題ないだろう?」
……雅城を?
「昼休みまで時間ちょうだい。それまでは今夜の予定、入れないでよ! いいね!」
水道をひねってタバコの消火活動を終えるとすぐ、松原さんは給湯室から走って出て行った。
あぁ。一体どうなっちゃうんだろう……。
この先のことを考えると、わたしの頭痛は余計に酷くなった。