魅惑のくちびる
雅城はどんなところに行ってもまずジントニックだ。

松原さんはGuinness、わたしはカシスオレンジ。


「今日もお疲れ! カンパーイ!」

カチン。

松原さんの音頭でグラスを合わせた。


「あぁ、念願かなって嬉しいよ。今日は紳士に、飲み過ぎないようにしないとな。」


ニコニコ顔の松原さん。おもしろくなさそうな雅城。

二人が並んでいる姿はとても対照的で、こちら側の席からしかその様子が見えないというのがまた苦しい。


だって……それを見ているわたしだけが、心を痛めるんだもの。

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