魅惑のくちびる
「しかしさ、璃音ちゃんは魅惑のくちびるを持った天使だよな。
本当に璃音ちゃんの背中には柔らかな羽でも生えていそうな気がするよ。
無条件で守ってやりたい気分になるほどだ。
うちの会社ヤローどもはむさくるしい奴ばっかりだし、目の保養に1時間に一度は見ないとな。」
松原さんの冗談はもう、雅城には受け入れられなくなってしまっていた。
「そうか? 別に大塚さんくらいのレベルなら、他にもゴロゴロしてるだろう。
それにくちびるだけクローズアップされて注目されるって、なんだか下品だよな。
選んだ奴も下品なら、選ばれた方もどうなんだか。」
雅城は悔し紛れにそんなこと言ってるんだ――よく、わかってる。
でも、どんなに心配をされても、今までそんな風に言われたことなんてなかったんだ。
わたしは……結構傷ついてるってことを、少しずつ実感していた。