魅惑のくちびる
「おい、お前酔ったのか? そんなにアルコール弱いやつだったっけ。
……璃音ちゃん、ゴメンな。これだからおっさんっていやだな。」
松原さんは冷静だったけど、焦っているのがうっすらと顔ににじみ出ていた。
「おっさんだと? オレはお前とタメだ。しかもオレの方が早生まれだぞ。」
怒りをぶつけるような雅城の口撃は、どんどん激しくなってゆく。
「なんだよ、お前、一緒に組んで仕事した割に結構冷たいこと言うのな。
オレにはお前のタイプなんかどうでもいいけどさ、オレ自身は結構真剣に璃音ちゃんのこと好きだぞ。」
それがどういう意味かだなんて、ゆっくりと考えてる余裕、わたしにはなかった。
どうすればいいのかわからないまま、心地よく耳に入るジャズピアノの音に意識を集中させていた。