魅惑のくちびる
「そうか。天使は美しい心を持ってるから、すぐに傷ついて羽を傷めてしまうんだな。
傷つけた要因は、オレにもあるから……。ゆっくり、傷が癒えるのを待つとするよ。」
雅城の言葉に傷ついたって思っているんだろうな。
松原さんには悪いけど、今はそう思ってくれてる方が助かるというのが本音だ。
「ごめんなさい……。明日もちゃんと会社行きますから、あまり心配しないで下さいね。」
わたしが笑顔を向けると、松原さんも静かに微笑んだ。
「そう言ってくれると、オレも救われる。
給湯室でのおしゃべりくらいは、今までと変わらず付き合ってくれると嬉しいよ。」
「はい。もちろんです。」
「よし、それ聞いて安心した。
さぁ、あまり遅くならないうちにバス停まで送るよ。」