魅惑のくちびる
松原さんと足並みを揃えながら、家に帰ってどんな顔をすればいいものかをぼんやりと考えていた。
そもそも、なんでこんなことになっちゃったんだろう――。
わたしが雅城を思って行動すればするほど、どんどんよくない方向へと突き進む気がしていた。
……もう何をどうすればいいのかわからないよ。
わたしを気遣って、松原さんはもうさっきのことを一切口にしなかった。
もちろん、雅城のことをも。
わたしをなんとか笑わせようと、必死にいろんなことを話しかけてくれてはいたけど、上の空のわたしはただ相づちを打って微笑みを浮かべるのが精一杯だった。
橋の向こうには歓楽街の煌びやかなネオン。
水面までキラキラしてるその様は、わたしの心とは対照的に写った。