魅惑のくちびる
入口を抜けるとすぐに、トンネル型の水槽がお目見えする。

中に泳ぐ、無数の魚たちにしばし見とれてしまう。


エイが羽を広げたような格好ですいすい横を通り過ぎてゆく。

オレンジの魚、縞々の魚、みたことないような色合いの魚。

名前なんて調べていたら、その間にどんどん泳いで行ってしまうんだ。


夢中になっているわたしを、松原さんはニコニコしながら見つめている。


ガイドを見ながら、通路の向こうを指さした。

「あそこをあがるとすぐ、アザラシがいるんだって。行ってみようか」

……わたし、まるで父親に連れてこられた子供みたいだ。

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