魅惑のくちびる

「すぐに答えを出してだなんて、オレも無理なことは言わない。

璃音ちゃんを困らせたいわけじゃないからね。

ただ、イエスかノーか、それはちゃんと答えで貰いたいって思ってる。

つまりは――曖昧なままにだけは、しないでいて欲しいんだ。」


松原さんは、バゲッドを小さく一つちぎって口に放り込むと、コップの水を一気に飲み干した。


「ありがとうございます。お気持ちは本当に嬉しく思ってるんです。

だからわたしも、精一杯きちんと考えてお返事しますね。」

「まぁ、あまりプレッシャーにならないで。でもいい返事、期待してるけどね」

いたずらっぽく笑い、運ばれてきたデザートのお皿を引き寄せた。


いちごのシャーベットは、それ以外の材料がほとんど入っていないとすぐにわかる、素材の味が生きている甘酸っぱい味。

一口入れて思わず目をつぶってしまったのは、酸味と冷たさに驚いてしまったからだ。

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