魅惑のくちびる
「オレさ、昔からなかなか好きな人との恋が叶わなくて。
なんでだろうな。……きっと、好き過ぎて、重すぎるのかもしれない。
まるで、このシャーベットみたいだよ、甘酸っぱい思い出ばかりだ。」
会社の誰が聞いても、そんなの嘘だろうって思うに決まっている。
そうは見えないってみんな答えるだろう。
言い方をもっと別な風にすれば「女に不自由しない」タイプに見える。
当然、わたしもそんなの信じることができなくて。
「えー、本当ですか? そうは見えません!」
と、ありきたりな言葉で返した。
「彼女ができたとしても、それは全部、女の子の方からオレに打ち明けてくれたことであって。
オレが想いを寄せる人は、叶った試しがないんだ。」
わたしは、自分のことを責められているような気持ちになって、思わず目をそらした。