魅惑のくちびる
「あぁ、これは別に、同情を誘って璃音ちゃんを振り向かせようとしてるわけでもないから心配しないで。
ただ……結構真剣に好きなのに、もしかしたら伝わってないのかなぁってさ。
そこだけは、わかってくれたら嬉しいな」
松原さんの気持ちは、痛いくらいによく分かってる。
できればわたしだっていい返事をしたいけれど……雅城という存在がいる今、答えは一つ――。
走る車の中、ふと雅城のことを思い出していた。
そろそろ仲直りしないと、だんだんしづらくなっちゃうじゃない。
でも……今回は、わたしから切り出すのは絶対にしたくないんだ。