魅惑のくちびる
松原さんに見つからないように、こっそり携帯のサブディスプレイを確認する。
……やっぱりメールは来ていない。
今日は、雅城が休日出勤だということしか知らないし、雅城だって、わたしが今日何をしているのかわからない。
――付き合ってからこんな事、初めてだ。
わたしは尋ねなくても、雅城がわたしの行動を尋ねるのは日課のようだった。
……少しくらい、ヤキモチじゃなく本当に心配してみたらいいんだ……。
わたしらしくない、ヤケ気味の思い。
「あんまり、浮かない顔」
松原さんが、ちらっとこちらを見た。
「あっ……いえ、そんなことないです……わたし車あんまり強くないみたいで……ごめんなさい。」
白々しい嘘と、わかっていてついてしまうわたしは、本当に嫌な奴だ。